「ねえ」
「何」

時間帯は夜。それらしく私は眠りに就いていた。
しかし、その場所は私の部屋ではない。
むしろ室内ではなく、外だ。テントの中である。
……これは今に始まったことではないのだけれど。


「ねえってば、アリス」
「……なによ、私寝てるのよ、わからない?」

就寝中に起こされた私は少々機嫌が悪く、私を揺り起こそうとする彼を睨みつける。
大体彼も寝ていたはずなのに、どうして起きているのだろう。
彼の表情は暗く見えない。

「ははっ、そんな怖い顔するなよ!可愛い顔が台無しだぜ?」

夜目が利くらしい彼はそんなことを言い笑っている。
見なくともわかる、だって相手は彼なのだから。

会話をしていることで少々目が覚めてきてしまった私は、手元のランプを点けた。
やはり彼は笑っている。異常な爽やかさだ。
けれど、


「…?どうしたの?」
「別に?目が覚めたからさ、一人じゃ暇だなーって」

さも普通の受け答えをする。
しかしやはり様子が…少し、ほんの少し、おかしい。

じっと彼の目を真剣に見つめ返し続けていると。

「ユリウスの夢を見たんだ」
とぼそりと答えた。


ユリウス……「引越し」という意味不明な理由で、どこかへ行ってしまった私と彼との共通の友人。
夢の内容をぺらぺらと話す彼は全く辛そうではなく、笑顔を絶やしてはいない。
--部屋に篭もりきりなアイツを無理やり連れ出して旅に出たんだ!--
けれど、けれど。

「夢にまで見るなんてほんと気持ち悪いよなー!あはははは!」
笑い終わった彼の顔は、とてもとても寂しそうで。
泣き出しそうで。
でも彼は泣かない。
でも彼は泣いている。

「アリス?」
私は体を起こし、彼を抱きしめる。
「アリス?ユリウスの話ばっかで嫉妬しちゃったとか?可愛いなあ」
彼の泣いて震えている心ごと抱きしめる。

「私はどこへも行かないわ」
「行かないから」

私は祈る。誰にでもない、ただ祈る。
「引越し」なんてくだらない理由で、私と彼を引き剥がさないで。
彼を一人にしてしまわないで。




頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで



2008.06.06 依存的愛五題
1どこにもいかないよ(いけないよ)
2頼むから逃げないでって、そんな風に泣かないで
3君の熱が足りない
4どうしてこんな痛み俺に教えたんだ
5肩を寄せ合い夜明けを待とう

エースで消化していこうと思います。
でも5が思いつかないというか不安です…彼に夜明けはあるのか。
配布元様→rewrite